本の紹介10

暦読本

『文科系のための暦読本』

著者 上田雄
発行所 彩流社

私たちが日頃なんの疑問も持たずに、当然「そこにあるもの」として使っているカレンダーは、空気のような自然のものではなく、普遍的なものではない。
私たちは、年月日については、世界各地でいろいろな測り方(ルール)があり、それによってカレンダーもみな違っているのだ、ということをまず知らねばならない。
~暦のルール


この本では、暦がどのようなルールで作られているか、そこに至るまでにどのような歴史を辿ってきたか、について分かりやすく説明されています。
天体の動きは、整数で割り切れるほど単純な周期になっていないので、その誤差を修正するために古くから様々な工夫が行われてきたようです。
その過程をみると、学問の進歩であったり、生活の変化であったり、為政者の思惑であったりと、暦がその国の文化や歴史を大きく反映していることが分かります。
現在、日本で使われている暦における正月や正午といった基準も、単なる便宜上の「決めごと」でしかないことに気付かされ、考えていた以上に曖昧なルールの上で社会が回っていることを面白く感じました。
暦は陰陽五行説とも関係が深いため、東洋医学の古典を理解する上でも、暦についてもっと勉強しておきたいと思いました。

本の紹介09

老荘思想入門

『老荘思想入門』

著者 月洞譲
発行所 PHP研究所

昔の真人は、生を喜ばず、死をにくまない。
ゆったりと行き、ゆったりと来るだけだ。
始めも忘れず終わりも求めない、受けて喜び、忘れて返す。
心は道にそむかず、自然に逆らわない。
これが真人である。
そういう人は、心は全てを忘れ、ようすはもの静かで、ひたいは広い。
秋のようにきびしく、春のように暖か、喜びも怒りも、四季の自然に移り変わるよう。
外物とよく調和して、ゆきづまることがない。
~第二章 人生について


高等学校の「倫理」の授業では様々な思想や哲学を学びましたが、私が何よりも興味を持ったのは老荘思想でした。
私が理想としていた人間像や生き方に、それすら老荘思想の影響を受けていた可能性は否定できませんが、最も近かったことが老子や荘子に惹かれた理由だったと思います。
老荘思想の説話は多くの例え話を用いて分かりやすく書かれており、そこから導かれる発想の転換は単純に読み物としても面白いものです。
この本では、老荘思想を現代の情勢と照らし合わせて解説されており、現在の日本人の生活や考え方にその影響が色濃く残っていることを実感できます。
現代社会で生活を営む上で、また、煩悩が多すぎる私自身の性格上、書かれている内容の全てを実践することは現実的に困難ですが、心の片隅にはそうした境地を持てるようになりたいと思っています。

本の紹介08

風邪の効用

『風邪の効用』

著者 野口晴哉
発行所 ちくま文庫

体を使っているうちに、或る一部分が偏り疲労の潜在状態になって、そういう部分の弾力性が欠けてくると風邪を引き、風邪を引いた後、回復してくる。それで私は風邪は病気というよりも、風邪自体が治療行為ではなかろうかと考えている。
~偏り疲労と風邪~


本書の内容の元となる講義は五十年も前に行なわれたようですが、初めて読んだときは、現代医学とは一線を画した革新的な考え方に驚かされました。
「風邪」という最も身近である疾患を、ウィルスの感染や身体の異常としてではなく、健康を保つために不可欠な「治療行為」として捉えて書かれています。
安易に風邪薬を飲むと却って長引くことや、風邪が経過した後はそれ以前より体調が良くなることは経験的に知っており、説明されている内容は納得できるものでした。
自分自身の健康を省みる上で、また医療に携わっていく上で、「治す」ということの意味を改めて考えさせてくれる一冊でした。

本の紹介07

美術解剖学

『入門 美術解剖学』

著者 高橋彬
発行所 医歯薬出版株式会社

芸術家が人体を表現する上で必要とされる解剖学的な知識を、骨格系と筋系を中心に解説してあります。
私が医療系の専門学校で学んだ解剖学と異なる点は、人体における運動器系を、年齢・性別・人種などによる「差」や他の動物との「違い」に主眼を置いて書かれていることで、解剖学の勉強としても新しく知ることが多くありました。
また、絵画や彫刻といった作品において、美術解剖学的な視点から見た場合に人体がどのように表現されているか、多くの作例を挙げて説明されています。
それらを見ると、人体を解剖学的に正確に写し取っている作品もあれば、造形としてより自然にあるいは美しく見せるために、あえて実際とは異なる表現をしている作品もあることが分かります。
人物を題材とした芸術作品を観る際には、そうした工夫に目を向けてみるのも面白いと思いました。

本の紹介06

そして誰もいなくなった

『そして誰もいなくなった』

著者 アガサ・クリスティー
訳者 清水 俊二
発行所 早川書房

早川書房から出版されているアガサ・クリスティーの作品は大体読みましたが、他にも面白い作品は沢山あります。
どれも何らかのアイデアが含まれており、意外なトリックや構成上の工夫を思い付く独創性と、それを作品として完成させる作家としての技量に感心させられます。
また、クリスティーの作品はミステリーとしての完成度もさることながら、人間観察に優れており、人物の描写が丁寧なのも私が好きな理由の一つです。

ここでは、本の内容については、あえて触れないでおきます。
ことに推理小説においては、前知識を持たずに読むほうが楽しめるのは間違いありませんので。

本の紹介05

まんが経穴入門

『まんが経穴入門』

著者 周春才
訳者 土屋憲明
発行所 医道の日本社

正経十二経と奇経の督脈・任脈に所属する全ての経穴の名前の由来が、絵とともに分かりやすく解説されています。
多くの経穴は位置や作用に基づいて名付けられており、地形や動物に例えられた経穴の説明を読むと、古人の発想の豊かさに驚かされます。
また、経穴の名前には共通する漢字が多く用いられており、それらを知るだけで経穴の特徴について予想がつくことがよくあります。
一例として、任脈の「関元」を取り上げてみると、次のように書かれています。

>「関」は関所、重要な場所、「元」は元気を指す。
>この経穴は臍下丹田の位置にあり、人体の真気、元気が生まれる所で、呼吸の門でもある。
>全身の臓腑、経絡の根本でもあるので関元と呼ばれる。(以下略)

本の紹介04

のんのんばあとオレ

『のんのんばあとオレ』

著者 水木しげる
発行所 講談社

水木しげるが自身の幼少年期の体験を漫画化した自伝的作品で、のんのんばあを始めとする周りの人々との関わりの中で成長していく姿が描かれています。
家族やのんのんばあの言葉は心に残るものが多く、彼らの存在が水木しげるのその後の人生に大きな影響を与えたことがよく分かります。
漫画ならではの表現で現実と非現実の境界が曖昧に描かれており、日常における出来事の中に、妖怪や夢の世界が違和感なく組み込まれています。
普通の人は経験できないような不思議なエピソードが満載で、物語として読んでも完成度の高い作品となっています。

本の紹介03

よくわかる奇経治療

『よくわかる奇経治療』

著者 宮脇和登
発行所 たにぐち書店

以前、私が所属していた「東洋はり医学会」で、奇経治療を行なう際に使用していたテキストです。
奇経治療は即効性があり、患者が最も強く訴えている症状を軽減するという目的でよく用いられます。
この本には、宮脇先生が考案された奇経腹診の方法が詳しく記載されており、証の決定が比較的容易に行なえます。
また、主治穴として、八総穴以外に太衝-通里と合谷-陥谷が加わっていることも大きな特徴であると言えます。

本の紹介02

不思議の国のアリス

『不思議の国のアリス』

著者 ルイス・キャロル
訳者 高橋康也・高橋迪
発行所 河出書房新社

「待てったら。ねえ、足の爪先っていったろう」ウミガメモドキはしつこくいいました。「どうやって鼻で足の爪先をそりかえらせることができるんだ?ええ、どうなんだい?」
「それはダンスを習うときの最初の姿勢よ」アリスはいいました。でも、頭がすっかりこんがらがってしまったので、早く話題をかえたいと思いました。
~第十章 エビのカドリーユ~


世界中でベストセラーになった作品ですが、ストーリーの展開やキャラクターは非常に独創的であり、これが万人受けしたことが、良い意味で一番の不思議です。
もともと児童文学として書かれたようですが、内容は単なるファンタジーでは無く、社会に対する風刺も効いており、駄洒落やアナグラムといった言葉遊びの宝庫でもあります。
言葉遊びというのは翻訳が非常に難しいと思いますが、この本では和訳された本文と共に、原文の言葉遊びの注釈も付いているので二度楽しめます。
微妙なニュアンスは文化も含めて理解しないと伝わらないことも多いので、英語の勉強をして、いずれ原文でも読んでみたいと考えています。

本の紹介01

図説・東洋医学<基礎編>

『図説・東洋医学<基礎編>』

著者 山田光胤/代田文彦/はやし浩司
発行所 学習研究社

東洋医学の基礎概念について、イラスト付きで分かりやすく解説されています。
基礎といっても、この本の内容を全て把握できれば、東洋医学の古典に書かれている病態生理に関しては充分といえるほど詳しく記載されています。
今でも調べものをするときに開くことはありますが、特に鍼灸科の学生の頃に参考書としてよく読みました。
むしろ、この本を「東洋医学概論」の教科書にして欲しかったぐらいです。

 

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